2017-07

「先生」について。

久美先生と呼ばれるようになった。
昨年12月からコラボスクール大槌臨学舎で担任として生徒を受け持つようになってから、
生徒たちがそう呼んでくれる。
いや、正しく言うと、スタッフ間で話し合い、生徒に先生と呼ばせるか呼ばせないか、
話し合った結果、先生という役割を担うんだから、生徒に先生と呼ばせた方がマネジメントが
利くのではないかという結論になり、先生と呼ばせることにした。
中には「校長先生」と呼ぶ生徒もいる。

ぶっちゃけ、はじめは照れた。完全に名前負けしていた。
照れてる場合じゃないと、自分に言い聞かせて、「久美先生」と呼ばれるたびに、
呼吸を整えながら「なあに?」と毅然と答えた。
「なあに?」と平然とした顔で答えてから、少し笑いそうになる顔は、必死で隠した。

去年の中学3年生が高校生になってからは、「久美さん」に変わった。
やっぱりそっちのほうが気分も楽で、何かを背負ってない感じがした。
学校の先生は、常に「先生」という名に恥じない自分であり続けなければいけないから、
本当に大変なお仕事をされていると思う。

***
私の今年の生活は、女川向学館では、月曜日と水曜日、中3の20名を担当するクラスと持ち、
大槌では土曜日に50名の生徒が受講する読解力の授業を行う。
そろそろ先生と呼ばれるのも慣れてきた。
生徒に対して、いわゆる先生として接することもなんとなく勘を掴み始めている。

しかし私は「先生」なのか。今日は改めて、ほんとうの意味で「先生」を見た瞬間があり、
私は「先生」としての務めを果たしているのか、考える機会をもらった。

**
今日はキズナハイスクール2日目。
それについては詳しくは説明を求められたらするとして、
簡単に言うと岩手県の大槌町・宮城県の女川町のコラボスクールに通う生徒たちを中心に、
久慈や石巻などその他東北地域、そして首都圏からも高校生が集まり、
東京で復興の未来を考えるためのヒントを集めるグループワークをする東京サマーキャンプ。

私は今日、Motherhouse行きのグループに同行した。

Motherhouseは、ご存知の通り、最貧国からグローバルブランドとして通用する商品を
生み出すことをミッションにした企業。
社長の山口絵里子さんも副社長の山崎大祐さんも、私にとっては母校の後輩。
特に大ちゃんは、今から13年前、彼が大学1年生、私が大学2年生の頃、東京某所で実施される
サークルに入っていて、いつも赤坂から湘南台までの電車が同じ。
いろんなことを語り合った仲間だった。
当時は、大ちゃんはテレビマンにでもなると思っていたし、まさか13年後、お互いに
こんな未来が待っているとは、予想だにしなかった。

で、「先生」について。

結論からいうと、大ちゃんはものすごく「先生」だった。
彼の本業はMotherhouse副社長。ばっりばりのビジネスマン。
彼はたぶん、先生と呼ばれる仕事はしていない。

でも、ここ最近見た誰よりも、彼は「先生」だった。

まず同社に生徒が入ると、社員さん全員が立ち上がり、一人ひとり、自分がしている仕事の話、
自分が高校生の時に思い描いていた事、今だからわかる高校生に伝えたいことを、
口々に話してくれた。
彼曰く、子どもたちに語りかけることが、社員にとっても学びになると言う。
大ちゃんは心から本当にそう思っているから、きっとそういう指示を出しているんだと思う。
だから社員の人たちも熱っぽく話してくれたんだろう。

その後、大ちゃん自身の話をし、なぜMotherhouseができたのか、
自分はなぜゴールドマン・サックス社を辞めてまでこの仕事をしてるのか、情熱的に語る語る語る。
マザーハウス1

バングラデシュという国で起きている劣悪な労働環境の実態、Motherhouse社が目指す、
バングラデシュでも「働く」を生きがいにできる職場、それによって生産性No.1になったこと・・。
彼が語る言葉には、教科書100万冊読む以上の価値があった。
カッコつけのうわ滑った言葉なんて一つも無い。
すべて実践の中から見えるトライアンドエラーだから、嘘がない。
心から誇りを持って大切に育ててきた仕事について、ただ、正直に話しているだけだから。

そして、バングラデシュにSkypeでつなぎ、現地で雇用されている方に高校生が質問する。
マザーハウス2


セッションの後は、現在移転建築中のマザーハウス本店づくりを生徒が手伝わせていただけた。
マザーハウス3
マザーハウス4
マザーハウス5

手伝いといっても、少し木を切るくらいなものだけど、大ちゃん曰く
「僕たちだってノコギリを触ったのはこの仕事をはじめてからだった。
 自分の手で仕事を作り出し、自分の手でお店だって作り出せる。
 やれないことなんてひとつもないって、知ってもらいたいから」と、爽やかに言う。

はっきりいって、こういう職場体験の受け入れは、企業側にものすごく手間がかかる。
カタリバは、受け入れ側も、依頼側も、両方を経験しているるんだけど、
受け入れ企業側に子どもが来るということは、そこに人をつけなければプログラムにならず、
そんなことを許可してくれる企業はとても少ない。そんな中、無理にお願いした今回の企画に、
大ちゃんは全力で応えてくれた。

生徒たちの中には、正直グループで割り当てられたからMotherhouse社に訪問した生徒もいた。
本当はGoogleに行きたかったといった生徒もいた。
バングラデシュなんて、社会科で習っていたのかもしれないけど、よく知らない、といいながら
電車の中でWIKIPEDIAを調べていた生徒もいた。
しかし、大ちゃんの言葉に全員が心から魅了され、知識欲にも、好奇心にも火がついて、
バシバシ刺激されている様子だった。

改めて、「先生」ってなんだろうと、思う。
職業として先生だから、「先生」なのだろうか。
自分が心から好きな数学を、心から楽しいと思いながら、生徒に教えること。
そういう先生と出会えば、生徒は数学が、苦手であっても好きになれるのかもしれない。
英語だって、国語だって、社会だって、理科だって、そう。
学びのモチベーションに火をつけるキッカケをくれる人。
これが、本当の意味での「先生」なのではないか。

久美先生と呼ばれはじめて9ヶ月。
はたして私は「先生」ができているのだろうか。
生徒に知識を教えるのではなく、心を動かす動機づけをすることが、できているのだろうか。
先生と呼ばれるようになったからこそ、先生という言葉に奢らず、自分に問いかけ続けたい。
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プロフィール

kumimamura

Author:kumimamura
今村久美
▼特定非営利活動法人
 NPOカタリバ代表理事
▼コラボスクール
 女川向学館・大槌臨学舎校長
▼高円寺・中野・女川町・大槌町 を行き来する毎日。
 校長と呼ばれることが
 まだムズカユイですが、
 名前についていけるように
 がんばります。
▼このブログは、私が好きな
 ように使う個人ブログです。
 NPOカタリバ公式発信では
 ないことをご了承ください。

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