2017-07

青森のカタリバ

青森にいます。
ここでは、2年前よりカタリバの手法を取り入れてくださり、県の重点事業として、地域の学生が地域の高校に訪問する活動がはじまりました。今日は弘前から車で30分ほどの田園の中にある高校、尾上総合高校に県内30名程の大学生が集まり、カタリバプログラムが実施されました。私は明日三沢温泉で行われる学会でパネリストを務める関係で青森に来たので、ちょっと早めに青森入りして、今日の現場を見学させていただきました。

高校生の声:「いま部活を頑張っているんだけど、進路のことは考えないようにしていた。でも今部活を頑張ること自体が、だんだん大人になることに意味があることなんだって、わかった」
大学生の声:「大学生活に目標もなにもなくて、自信がなくて、だらだらしていたときに、友達に誘われて参加した。単純に同世代の人が一生懸命やっていることに感動したし、自分のことを見つめる機会になった。今日で5回目の現場です」

ここには確実に、NPOカタリバと同じ息吹が、もしくはもっと普遍的な存在として、カタリバがありました。

ちなみに青森のカタリバは東京のカタリバ本部が直轄しているわけではなく、何度か見学や研修に来ていただいたり手法をそのまま使っていただいたりと多少のお手伝いしましたが、すべて教育委員会の方々がこの状態まで持ってきました。

青森県とのお付き合いは、2007年2月、一本のメールがきっかけでした。
ご本人に許可をいただいて、転載いたします。

****
こんにちは。初めてメールを差し上げます。青森の坂本徹と申します。現在は青森県教育委員会におりますが、もともとは高校の教師です。ふとしたきっかけでカタリバを知り、なんだか嬉しくなってメールを書いています。

6年前、ある高校に赴任した私は、強い疑問を感じました。進路指導があまりにずさんというか何というか…。だらだらと時間が流れる進路講演会。未整理資料の大量投与。形式的で中身のない個人面談。キャリアデザインなんか描けるわけがありません。しかもほとんどの教師が疑問に思わないということに愕然としました。

その高校での5年間、私はキャリア教育の重要性を説き、系統立ててキャリア教育を進めるプログラムづくりを手がけました。進路指導の直接担当ではなかったので、やりにくいことが多かったのですが、徐々に賛同者も増え、校長や教頭も理解を示すようになりました。様々な取組が実行に移され、その成果が徐々に出始めていますが、ひとつ、実現できなかったことがありました。
いわゆる「カタリバ」です。

大学生や社会人によるピュアカウンセリングの有効性は確信していました。
しかしながら、高校の卒業生を招聘したり、近隣の大学にお願いして学生を派遣してもらったりしましたが、うまくいきません。大学生側に「主体性」が無いから、形はカタリバと似ていても機能しないのです。ある程度は予想していましたが、やはり無理だったようです。

4月に教育委員会の生涯学習課に転勤となりました。大学にアプローチしやすいセクションです。私は千載一遇のチャンスと思い「仕掛け」に取り掛かかりました。半年をかけて生涯学習課内の理解を得ることに成功。「多様なベクトルによるピュアカウンセリング事業」という名称で、来年度、いくつかの大学の協力を得て試行するいうところまでこぎつけました。
ただ、組織も仕組みも机上プランですから、期待と同時に大きな不安も感じていました。

そんな折、昨年末に東京で行われたある研修でカタリバを知りました。東京都教育委員会との連携に主眼を置いた紹介でしたが、私は活動そのものに興味を持ちました。何より、資料に載っていた図に引き付けられました。私が周囲への説明用に作った図とそっくりだったからです。添付したのがそれです。カタリバを知る2ヶ月前に描いたものです。青森に戻ってからインターネットで検索し、カタリバのHPにたどり着きました。

驚きました。
なんと、私と同じ発想がそこにあったのです。しかも、既に具体化され、生き生きと活動している様子。そして進化を続けているらしい!設立趣意書をはじめ、紹介記事などもじっくり読ませていただきました。すばらしい!と思いました。エネルギーを感じました。そして嬉しくなりました。

青森版カタリバは、まだ生まれていません。でも、本家カタリバと出会ったことで、絶対に生まれてやろうとの気持ちを固めました。これから、誕生まで羽陽曲折があろうかと思います。先達としてご指導いただければ幸いです。

健康に留意してお過ごしください。遠く離れた青森から、本家カタリバの活躍を応援しています。

青森県教育庁生涯学習課 指導主事  坂本 徹

*****

この坂本氏の熱意から始まった事業、現在150名ほどの大学生が参加、12校の高校でカタリバを実施しています。150名、東京の3500名と比べると少なく見えますが、東京には大学生が60万人いるといわれています。大学生人口が1万5千人の青森県で150人のボランティアを集めること、これ
はただならぬこと。だって、普通に考えたら、行政職員のおじさんの呼びかけに、いまどきのワカモノが答えないですよ。なんだか面倒くさいって。

また、どこの地域でもカタリバを実施する際にネックになるのが、学校という『聖域』的な場所をまずは開いて、先生以外の人が学校に出入りするというこれまでなら非常識だったことをやってしまうという点。
民間の人たちの感覚だと、それの何が難しいのかと思われるかもしれませんが、これまで学校で「教える」のは先生の専売特許だったわけで、それを変えるのは、たいへんなことなのです。
しかし青森県では、2年しかたっていない今の時点で、実施希望をされる学校は増えているのにも関わらず、運営の関係で締め切らなければいけない状況。
カタリバははじめの2年間、授業の枠組みでの受注はゼロでした。私の訴求力のなさも、往々にして原因ではあったわけですが。

カタリバはNPOからはじめたから大変だった。青森は行政の人たちがやってるから楽にできる。
なんて、そんなことはぜんぜんなくて、行政だからこそ学校との関係に難しさがあるという側面も、忘れてはなりません。

坂本氏の後継者として現在のカタリバをプロデュースするご担当の秋田氏ともども、教育委員会の方々は、日々クリエイティブに戦略をデザインし、現場に足を運び先生に訴え、生徒と話し生徒にとって本当に意味のあることを追求し、学生に研修してスキルアップさせ、大学に呼びかけて学生募集を仕組み化し、予算を捻出しながら確実に改革を推進しています。

私には、彼らが青森県の学校教育のあり方とその文化を変えていっているように見えます。

文部科学省が中央で決めたことの範囲で仕事をするのではなく、現場で見える生徒のこれ以上ない笑顔や、プログラムに関わる大学生の成長を目前にして、青森教育委員会の方々は、仕事に境界線を設けるよりも前に、もっともっとこの地域で育つ高校生・大学生を良くしていくためにはどうしたらいいかを考えます。
そういう発想ができるのは、行政と学校、行政と地域、行政と子供たち、それぞれのコミュニケーションにリアリティがあるから、相手の顔が見えた政策が、生まれるのでしょう。中央官庁にいて国民の顔が見えないのは当然で、非常にバーチャルな関係。青森ですでに始まっているこのサイクル、これが分権社会になったときに地域の行政マンたちの仕事のあり方、なのかもしれません。

ちなみに他県ではどんなことが起こるのかというと、「大切なことだとわかっているけど、自分の権限ではできない」となります。いとも簡単に。
行政・高校・大学、みんなが縦割り社会の中でそれぞれの役割に線引きをしているように見える。
本来生徒のために何をすべきか、ではなく、役割範囲を優先しているのでしょう。このように、今の時点でもすでに出来ることがたくさんあるのにも関わらず、できることをやっていない。

今出来ることもやってないのに、政治がどうにかなって、予算の分権が始まっても、実際にそれを活用できる自治体がどれだけあるのか、疑問です。

さて、あと2日で総選挙。もうなんとなく結果は見えている今、選挙後の社会をあと数日青森の海の風に吹かれながら、考えてみたいと思います。
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プロフィール

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Author:kumimamura
今村久美
▼特定非営利活動法人
 NPOカタリバ代表理事
▼コラボスクール
 女川向学館・大槌臨学舎校長
▼高円寺・中野・女川町・大槌町 を行き来する毎日。
 校長と呼ばれることが
 まだムズカユイですが、
 名前についていけるように
 がんばります。
▼このブログは、私が好きな
 ように使う個人ブログです。
 NPOカタリバ公式発信では
 ないことをご了承ください。

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